二つの未来 2012 6 30
これから未来は、科学技術が加速度的に発達するでしょう。
しかし、こうした技術の進歩についていけず、
あるいは、科学技術に嫌悪感を抱き、
「自然に帰れ」という運動が起きてくるでしょう。
さらに、極端に走ると、文明そのものを否定する動きも出てくるかもしれません。
しかし、こうした動きは、人間の感情としては、当然かもしれません。
人類の歴史の大部分は、自然とともに生きてきたからです。
科学技術が急速に進歩したのは、
20世紀に入ってからであり、
それまでの数千年の歴史は、自然とともに生きてきたのです。
「ドッグイヤー」
これは、IT業界で技術革新のスピードを表す言葉です。
IT技術は、過去に人類が経験したことがないスピードで進化していくことから、
そのスピードを、犬が1年に7歳も年を取ることに例えて、
「ドッグイヤー」と言っています。
このスピードは、あまりにも速く、
IT企業ですら、そのスピードについていけず、
多数の企業が、この業界から消えていったのです。
ドッグイヤー・スピードは、
対象とする分野を確実に広げ、
なおかつ速度が増していくことになるでしょう。
そうした中で、科学技術に嫌悪感を抱き、
「自然に帰れ」という運動が起きてくるでしょう。
人類は、二つの未来に分かれていくでしょう。
あくまでも科学技術の進歩を求める人類と、
「自然に帰れ」という運動に共感する人類に分かれるでしょう。
こうした分裂によって、
先進国の政治は、いっそう不安定なものになるでしょう。
DNAロボット 2011 2 27
書名 DNAロボット 生命のしかけで創る分子機械
著者 萩谷 昌己 西川 明男 岩波書店
ロボットを何で作りますか?
金属で作ると、何かと不都合が発生すると思います。
鉄では、切ったり貼ったり溶接したり手間がかかります。
その上、つなぎ目のところが弱いでしょう。
さらに、さびが生じるという問題があります。
そこで、将来的には、バイオテクノロジーで作る方法があると思います。
遺伝子操作をすれば、植物、たとえば木も、丈夫な素材になります。
ロボットの頭脳であるMPU(CPU)も、
現代の技術では、やがて限界に達すると思います。
今の半導体技術は、微細化の限界に来ていると思います。
そこで、MPUも、発想を変えて、
バイオテクノロジーで作る手法も考えるべきだと思います。
IT技術というと、半導体やシリコンなどを連想しますが、
やがて、IT技術は、バイオテクノロジーと融合していくでしょう。
さて、RNAは、あまり丈夫ではありませんが、
DNAは比較的丈夫な素材で、部品として使うには、最適だと思います。
最近では、DNAという素材が市販されています。
この本によると、
「DNAを用いた実験を行うには、
まず必要な並び方・長さと塩基の並び方を持つDNAを合成する必要がある。
といっても、近年では、DNAを合成するサービスを提供する会社が数多く存在している。
塩基の数が数十から百数十個のDNAは、1万円弱で手に入れることができる」
その他に、この本から興味深いものをいくつか取り上げましょう。
「DNAを切る・つなぐ 制限酵素の利用」
「組み合わせ自在の平面構造 DNAタイル」
「計算するタイル DNAタイルの応用」
「回転する構造 DNAモーター」
「分子ピンセットはDNAで動く」
「歩く分子 DNAウォーカー」
「分子サイズの人造細菌 DNAリケッチア」
「燃料はATP 酵素で動くウォーカー」
さて、冒頭で金属のことを悪く書きましたが、
金属的な性質を持った生物を作るという発想もあります。
それを半生物化すれば、丈夫な素材になるかもしれません。